【中条町立乙小学校4年生と語る】
今日は寒かったです。車を降りスロープを使って校舎の中へ入って行きます。小 学校の中って寒いですね。日頃、ほとんど部屋から出ない『無菌豚』状態の生活を しているので、外出するのは億劫でした。生徒たちは車椅子の私に「こんにちは」 と挨拶をする子もいれば、興味深く眺めている子もいました。 さて、よいよ4年生が待つ視聴覚教室に向います。引き戸を開けた瞬間、子供た ちの拍手と「こんにちは」という大きな声での挨拶が私を向かえてくれました。 教室の中は暖かかった。この暖かさと子供たちの歓迎の暖かさに包まれて、私の口 はペラペラと勝手に動き始めました。 木村 パーキンソン病っていうのは動きづらいっていうのが症状なんです。私のよ うに車椅子に乗っている人もいれば、車椅子に乗らないでも杖をついて歩い ていたり、介助してくれる人と一緒に歩いている人もいます。皆さんは私の ように車椅子に乗っている人を見るとどう思われますか? 木村 そこの貴方、どう思います? 生徒 かわいそうだと思います。 木村 かわいそうだと思う人はちょっと手を上げてください。ほとんど、そうなん ですね。どうぞ下ろしてください。でも、車椅子に乗ってる当人からすれば 、別にかわいそうだという気持ちは無いわけですよ。人間っていうのは、そ の与えられた条件の中で生きていかなきゃならないから、この環境になれな きゃならないんですよね。皆さんだって車椅子に乗らないにせよ、自分の住 んでる周りの環境になじんで生きていかなきゃならないわけだから、それと 同じ事なんですよ。 だから、こういうふうに車椅子に乗っている人でも、かわいそうだと思って も良いけど、思われている人にすれば別にかわいそうでもないんです。車椅 子に乗って生活することが条件になっている。それが生活する中での決まり になってるんです。障害のない人であれ、障害のある人であれ、同じ人間で すから、助け合えるところは助け合うっていうふうな考えを持った方が良い ですね。 私もこういうふうに障害を持って4週に一遍、病院にかよってますけど、自 分で運転して通えないわけです。そういう時はボランティアさんに車を運転 してもらって病院へ行って帰ってくるんですね。そういうふうに私だけが他 の人に助けてもらうだけじゃなくて、私が出来ることを他の人にもしてあげ る事が大切です。 だから、一方的に相手に何でもかんでもしてもらうんじゃなくて、自分の出 来る事は相手にもしてあげる。私の場合、何が出来るかというと、一応、パ ソコンを人に教えることが出来るので、ボランティアで教えるということで ボランティア登録しています。でも、まだ申し込みは1件も無いけどね。 (苦笑い)上手下手に関係なく、自分が相手にしてあげられる事をしてあげ るって事が重要だと思うんです。そこには障害者とか健常者とかいう境は無 いわけです。 そこで皆さんのお家の方の中にも具合の悪い人とかいるかと思いますけど、 具合の悪い方のいる人は手を上げてください。君は誰が具合悪いの? 生徒 おばあちゃんの妹が手とか、足とか具合悪いけど。 生徒 家のおばあちゃんも具合が悪い。 木村 それで君は、そのおばあちゃんのために手伝って欲しいって事をやってあげ てる? 言われる? 何か手伝ってくれって? 無い? そのうち言われる ようになると思うから、その時は手伝ってあげてください。そういうふうに 、君たちはまだ4年生だけど、小さい子供でも人の役に立つことが出来るわ けです。 誰か転んでいたら手を差し伸べるのも人を助けることだしね。私の場合は生 れた時からこういうふうに足が悪いわけじゃなくて、車椅子は使ってなかっ たわけです。29歳の時に初めてパーキンソン病というふうに診断されたん で、それまではいろいろ運動をやってたんですよ。中学の時は機械体操やっ たりバスケットやったり、あと高校入った時はサッカーやったりしてね。社 会人になってからは空手やったり、テニスやったり、いろいろ運動は好きで やってたんですけど。今はそういうことすら出来ない。満足に歩くことすら 出来ない今の自分の状況を見ると、やっぱり、あの時、運動し過ぎたのかな ぁ?と思うこともありますけどね。(苦笑い) 木村 皆、運動は好きですか? 君、何が好き? そこの僕。いや、その後の赤い服の。 生徒 バスケット 木村 バスケット。ポートボールじゃないの? バスケット? クラブでもあるの? 生徒 ある 木村 ポジションはどこ? 生徒 わかんない 木村 わかんないか。 先生 まだ、そこまでいってなんです。 木村 私は高校の時ね。一応、今はミッドフィルダーっていうポジションになって いるけど、私が高校生の時はハーフって言ったんですよ。フォワード、ハー フ、バックスって言って。ちょうどハーフのセンターをやってたんだけど。 一度も公式戦では勝ったことがなかったんですけどね。一応、私がキャプテ ンをやってたんだけど。この町の高校で公式戦に来た時はね。対戦相手のチ ームに16対0で負けたんだかな。だから、ラグビーの試合をやってるよう なもんだよね。こういうこともやってたんで、私は生れた時から障害は持っ て無かったんですよ。 皆さんも、もしかしてね、これから先、障害を持つようになるかもしれない こともあると思うけど、そうなった場合、自分自身の気持ちの持ち方ってい うかな。健康だった時から急に病気になって、体がこううまく動かなくなる 。本当に最初は受け入れられなくて、どうしていいか分からなかったです。 だから、皆さんもそういう時は自分の気持ちを割り切って、切り替えること が一番重要です。自分はこういう条件の中で生きていかなきゃならないんだ っていうことを、それを自分自身に言い聞かせてやっていかないと、いつま で経っても、『何で俺はこうなったんだろう?』『何で私はこんな病気にな ったんだろう?』っていう事ばっかり頭の中でグルグル回ってしまうから、 そっから抜け出さないとダメなんです。抜け出して、なおかつ人として生き ていかなきゃなんない。 皆さんも社会人になってからの方が人生が長いんだからね。人間っていうの は自分の命を断ち切るって事が、自分の弱さを出す事だから、それは出来る だけやらない方が良い。自分の事を自分でコントロール出来るようにならな いと、人間っていうのは感情で動いてしまうから、そこらへんは皆さんもこ れから、今は分からないだろうけど、少し心の中に留めといて大人になった ら、そういうことをちょっと思い出してください。 木村 皆さん、今一番何が興味ありますか? あなた。 生徒 スポーツ 木村 スポーツの何? 生徒 バレーボール 木村 じゃ、中学校に入ったらバレーボール部に入るんだ。 生徒 わかんない。 先生 今やっているんです。 木村 ああ、バレーボールクラブあるんですか。 先生 はい 木村 9人制ですか? 6人制ですか? 先生 9人制・・・えっ? 6人でやってる。 生徒 6人。 木村 6人でやってる。じゃ、ローテーションがあって回るやつですよね。 んっ? 違うの? 先生 6人でローテーションで場所かわる? 生徒 かわらない。 木村 かわらないの? 6人制でかわらないの? 先生 小学生用のバレーなんです。 木村 ああ、そうなんですか。へぇ〜。他に誰かスポーツで自分はこんなのやっ てるって人はいませんか? はい、君。 生徒 野球。 木村 ポジションはどこ? 生徒 一応、練習試合はファースト。 木村 ファースト。あのう、打順は何番? 生徒 まだ決まってない。 木村 決まってない。これからなの公式戦は? 練習試合、何度か勝った? 生徒 ・・・。 木村 こういうふうに今は、健康でスポーツを楽しめる時もあるけど、さっきも 言ったように体が不自由になった状況でも、それに対応出来るような気持 ちになって欲しいと思います。後は一応、45分時間もらったんだけど、 ここに来る前に、いろいろ原稿書いて、どういうふうに話そうかと思った んだけど、原稿がうまく出来なくて『どうしようかなぁ。行くの嫌だなぁ 』って思ったんです。 昨日、電話に出てくれた皆さんのお友達と話してて、あ・こりゃ、ちょっ と話が合わせられないんじゃないかなと思って、大変だっておもいはあっ たんです。いざ実際にここに来て、皆さんの顔を見ながら話していると、 私の話が雑談みたいになってるから、あまり興味があるのか分からないけ ど、来て良かったと思います。 それで、皆さんの方から何か、私に質問みたいのはありますか? 手を上 げて質問してください。はい、どうぞ。 生徒 木村さんは障害があると言われた時に、どういう気持ちでいましたか? 木村 う〜ん、このパーキンソン病っていうのは治らない病気なんです。完治す る方法が無いんです。薬を飲んだり、手術したりして、症状を軽くするこ とは出来るんだけど、治らないって言われた時に、別に治らないって言わ れても、『あっ、そう』っていうような感じだったですね。私の受止め方 は。 それよりも、病名をつけてもらった事が物凄く嬉しかったですね。その前 までは、あっちこっちの病院を4軒も5軒も回って精密検査をしてもらう わけですよ。CTやMRI・・ああ、こんなの言っても分からないかな・ ・・。 先生 あのね、レントゲンを撮ったり、細かい検査をするのね。 木村 そういう事をしてもらうんだけど、どこにも異常がないわけです。この病 気は異常が見つかりづらい病気なんで、異常が無いって言われて、貴方の 気のせいだって言われるわけです。気のせいで、こんなに体が動きづらく なるのか?じゃ、自分でそんな風に演技しているのか?っていうふうに、 自分で自分に問いかけてしまったんです。それが病名をつけてもらう事に よって、『ああ、やっぱり自分は病気だったんだ』と、それをこのお医者 さんが認めてくれたんだと、それは病名をつけてもらったこと自体が嬉し かったです。 治らない病気だと言われても『あっ、そう』って感じでした。それはそれ で『しょうがないんじゃない』って気持ちでした。良いですか? 他にあ りませんか? 気楽に、気楽に聞いてください。はい、どうぞ。 生徒 木村さんの好きな事はなんですか。 木村 えっ、好きな事。好きな事ねぇ。好きな事は何だろねぇ。仕事かな。仕事 と言っても、お金をもらう仕事とお金をもらわない仕事があると思うんで すよ。仕事っていうのは、人の役に立つのが仕事だと思っているんです。 だから、これをやる事によって人が喜んでくれたり、人を助ける事が出来 るようなことをやった時に、良かったなと思うことがあります。 それにこの病気の人たちっていうのは、結構ね、他の人から怠けているん じゃないかとか、体がうまく動かないから怠けているんじゃないかとか、 変な目で見られることがよくあるんです。そういうような、自分の頑張れ る場所で頑張れるのが一番楽しいですね。仕事している時だと思いますよ。 良いですか? 分かった? 分からないかぁ。(苦笑い) 他には無いですか? はい。 生徒 木村さんの好きな食べ物は何ですか。 木村 好きな食べ物。豚足以外であれば、好き嫌い無くなんでも食べれますけど、 特に好きな食べ物と言われても何も無いけどね。後、他にないですか? 足くずしても良いですよ。はい、君。 生徒 障害の生活は大変ですか。 木村 う〜ん、そうですねぇ。障害の生活は大変ですねぇ。うまく止まれないで ね、壁に突っ込んで行ったりしますからね。痛い思いは何度もしますよ。 例えば、台所まで行きたいんだけれども、台所を通り過ぎて壁にぶつかっ てしまう事は結構ありますね。そういう時は止まれないんですね。止まり たくても。自分は台所の所で止まりたいんだけど、突っ込んでって壁にぶ つかるわけですよ。よっぽど危ない時ははって歩きますね。部屋の中は車 椅子も使えるように、義理のお兄さんがバリアフリーっていって段差の無 いように作ってくれたんですよ。 だから、車椅子を使おうと思えば使えるような所なんだけど、出来るだけ 車椅子は使わないで、出来れば足の筋力は落としたく無いから、足の筋力 を落とすと戻すのに何年も時間がかかるからね。出来るだけ自分の足で歩 くようにしようと思ってやってるんだけど、後に転んだり前に転んだりす るから、結構、大変なことは大変ですね。良いかな? 良いですか? 他にありませんか? 何でも良いですよ。はい、どうぞ。 生徒 インターネットの仕事の中で一番好きなのは何ですか。 木村 インターネットの仕事? 一応、ホームページ作ることだけど、最近はほ とんど入ってこないんです。インターネットやってる? 生徒 ちょっとやってる。 木村 誰かとメールとか交換してる? 生徒 ・・・。(聞きとれない) 木村 学校ではやっていないんですか? 先生 メールはまだですね。インターネットで検索はやりますけれど。 木村 ホームページとかは作ってないんですか? 先生 学校のホームページはあります。 木村 あ、ありますか。 先生 はい。 木村 今、他の学校とメールの交換とかやってるところもあるもんね。今度、そ ういうふうになれれば良いですよね。後は無いですか。 生徒 木村さんはガイを持っていない人を見てどう思いますか。 木村 ガイ? 生徒 障害を持っていない人をどう思いますか。 木村 障害を持ってない人・・・。俺も昔はああだったよなと思います。別にこれ といって。同じ人間だからね。障害を持ってなくても、持っててもね。そん なに特別の意識は無いです。こんなんで良い? はい、あとは。はい、君。 生徒 木村さんはパーキンソン病にかかる前はどんなスポーツが好きでしたか。 木村 そうね、パーキンソン病にかかる前。テニスですかね。硬式のテニスやって ましたからね。良いですか。次は無いですか。はい、どうぞ。 生徒 木村さんは夜寝る時どうしますか。 木村 はい? 生徒 寝る時どうしますか。 木村 えっ! どういうこと? 生徒 車椅子からどうやってベッドに移るんですか。 木村 ごく普通に。私はいつも車椅子を使っているわけじゃないんです。多少、 歩けるからね。完全に足が動かないわけじゃないんです。車椅子を使って いるのは歩きづらいのもあるし、突進症状といってうまく止まれないで突 っ込んでって、他の人にケガをさせたくないから、車椅子を使っているの もあるんです。だから、自分だけケガするんだったら良いけど、他の人に までケガさせたくないから、車椅子を使ってるのもあるんです。寝る時は 普通の人と同じですよ。良いですか? 後はないですか? はい、どうぞ。 生徒 私は訓練が2回あるんですけど、木村さんは何回ぐらい通ってますか。 木村 はい? リハビリ? リハビリでしょ? 自分では、あまりやってないん です。本当はちゃんと筋を伸ばすストレッチとか、やった方が良いんだけ ど、私はだらしなくて、そういうのは毎日やってないです。 良いですか? 後、他にないですか? 何でも良いですよ。はい、君。 生徒 今まで幸せな事は何ですか。 木村 えっ? 今までで幸せな事?(苦笑い)う〜ん、今までで幸せな事ねぇ。 何だろうなぁ。う〜ん、幸せなこと・・・。同じ病気の患者さんと会えた 事かな。同じ病気の患者さんと会えて話が出来て、その輪が広がっていっ たのが一番幸せかも知れないね。それまでは一人だったからね。この病気 で同じ年代の人とあまり会うことはなかったからね。良いですか? 後は他に。はい、どうぞ。 生徒 得意な事はなんですか。 木村 私の得意な事・・・。昔は逆立ちして、腕立てふせするのが得意だったけ ど。 先生 逆立ち? 木村 壁に逆立ちしてね。十回ぐらいは出来たけど、今はパソコンですかね。良 いですか。他には何かないですか? 何でも良いですよ。 そこの君、何かない? はい、どうぞ。 生徒 木村さんは今まで生きてきて、どんな事が思い出になりましたか。 木村 まだ、これから先もあるんだけどね。今まで生きてきてね。何だろうね。 あっ、そうだ。健常者の時の自分と障害者の自分の二つの自分を味わえた 事かな。私も健常者の時があったから、車椅子に乗っている人を見て、 『ああ、大変だな』と、それぐらいなんですよ。いざ、実際に車椅子に乗 ってみるとほんと大変なんです。 自分で動かす時。特におしっこがもれそうな時に、これやると下っ腹に力 入るから、本当に出そうな気になる。これ結構大変なんです。腕の力いる し。今、私が使っているやつは役場から借りて、もう十何年借りっぱなし のやつだから、タイヤが細いと結構動かすのに大変なんです。やっぱり、 障害者になった自分と健常者の時の自分もあったし、二つの角度から見れ たってことかな。良いですか? 他には何かないですか? はい、君。 生徒 木村さんの苦手な事はなんですか。 木村 私の苦手な事はね、外へ出る事かな。歩きづらいから外に出ようと思って も、中々出れない。もっと極端に言うと、引きこもりの様になってしまう 自分が恐いです。それを何とかしないとならないんだけど、中々うまく外 へ出て行くことが出来ないです。い・良いですか? こんなんで? 後は何かないですか? はい。 生徒 木村さんが毎日やっている事は何ですか。 木村 私が毎日やっている事は、何だろうね・・・歯を磨いて顔を洗って、後は パソコンの電源を入れて、メールをチェックして、自分のホームページの 掲示板を確認して、後はそうねぇ・・・電話に出たり、音声チャットで話 したり、そんなところですかね。はい、どうぞ。 生徒 子供の時の思いでは何ですか。 木村 子供の時ね・・小学生の時はよくドッジボールをやりました。アンダーハ ンドで投げると相手が受けようとする手前で下の方に落ちるから、友達が 取りずらかったようです。あとは、昼休みになるとサッカーやったり。学 生ズボンはいたままサッカーやるから、泥だらけになって教室に帰って来 たりしてましたね。あとはねぇ、子供の頃の思い出ねぇ。冬場、雪の多く 積もってる時なんかに、積もった雪の上の方からバクテンやバクチュウの 練習をしました。 生徒たち うわー!! 木村 しないの今は? 生徒たち しないしない。 先生 危ないから出来ない。 生徒たち やったら出来るかもしれない。 木村 だって高い所からバクテンやバクチュウするんだから、やり易い。 生徒たち 死ぬかもしれない。 木村 死なない死なない。雪だから。 生徒たち 失敗したら。 木村 失敗しないようにやる。自分の体に覚えこませないとならないから。だっ て、跳び箱だって同じようなもんでしょ。跳べるようになるには、跳べる 感覚をつかまなきゃならないわけだから。バクテンだって、バクチュウだ って理屈じゃない。自分の体に覚えこませるもの。皆、やらないの? 今は危ないからやらないのかな。? 恐い? 生徒 恐い。 木村 今は雪が少ないからね。後はねぇ、雪が積もっている時に、雪上ラグビー っていって雪の上でラグビーやるんですよ。 生徒たち え〜〜!! 木村 雪の上で転んだって痛くないでしょ。 先生 疲れますよね。 木村 えっ!? だって子供は疲れないでしょ。 生徒 寒いよ。 木村 だって、体動かすんだもん寒くないさ。かえって汗かいて、それで寒いか もしれないけど。君たちは、どんな遊びやってんの? 生徒たち 遊び? 木村 手つなぎ鬼とか。 生徒たち ドッジボールとか、なわとび。 木村 なわとび。あのう、一人でやるやつ? 生徒たち 大なわとび。 木村 二重とびなんかやるでしょ。 生徒たち うん、やる。 木村 今、小学校で一輪車とか、やるって聞いたけど。 生徒 一輪車? 木村 一輪車やらないの? 生徒たち やりたいけど。 先生 やりたいね。よそはやってますね。 木村 一輪車やるとバランス感覚良くなりますから。一輪車出来れば、サーカスに も入れるかもしれないけど。 先生 あすかちゃん、上手だよね。 木村 小学校の時の思い出って行ったら、そんなところかな。後はね、小学1年生 の時かな。学校に早く来てね、相撲やるんですよ。 生徒たち えー!! 木村 6年生のがき大将がいて、その人がみんな仕切ってくれるわけ。お前次行け 、その次はお前っていうふうに。二組に分かれて相撲をやった覚えがある。 後は、昼休みに手つなぎ鬼とかさ。鬼が手つないでいくやつ。わかるよね。 生徒たち 分かる。やったことある。 木村 後は鉄棒でこういうふうに、ここに鉄棒が入って背中で回っていくやつ。 34・5回出来たかなぁ。 先生 前の方に回るんですか。 木村 前じゃなくて背中で回ります。 先生 蹴り上がりで回るのかな。 木村 後は鉄棒で前転して飛び降りたり、小学生の時は遊ぶばっかりだったね。 あと家の手伝いさせられたり。手伝いからは逃げられない。飯食わせて もらわなきゃなんないから、家の手伝いは絶対やらなきゃならなかった。 小学生の時の思い出っていったら、そんなところかなぁ。 後は何かないですか? はい、君。 生徒 木村さんは普段の生活で楽しい事って何ですか。 木村 普段の生活で楽しいこと、そうねぇ、ご飯を食べてる時。いや、う〜ん、 非常に難しい質問なんだけど、何だろうね。特別言われても考えつかな いなぁ。楽しい事・・・(悩む)・・・そうねぇ、人と会って話すこと かな。あと他にないですか? はい、どうぞ。 生徒 家族は一人ですか。私は7人家族の兄弟の一番上なんですけど。 木村 私は3人姉弟です。上がみんな姉でね。私は今、一人暮らしなんです。 食事の支度も、食べるのも一人だから、後かたずけも全部、自分でやら なきゃならない。部屋の中はゴミだらけかもしれない。良いですか? はい、君。 生徒 体が勝手に動く病気なんでしょ? いつからなったんですか? 木村 パーキンソンになったのは、いつからかってこと? 病名をつけてもら ったのは29歳の時だけど、その前から悪かったね。27くらいから悪 かったかもしれない。良いです? はい、どうぞ。 生徒 木村さんの子供の頃の将来の夢は何だったんですか。 木村 子供の頃の将来の夢、そうプロレスラーですね。 生徒たち おぉー!! 木村 身長が190センチくらいになったら、プロレスラーになりたいと思っ てた。30センチくらい足りないけど。はい、君。どうぞ。 生徒 木村さんの生活で大変な事って何ですか。 木村 生活で大変なこと? 生活で大変な事はお金が無いこと。生活でお金も そうだけど、一人で全部やらなきゃならないのが一番大変かなぁ。洗濯 もやるし、掃除もやるし。全て自分でやるって事、それが大変かもしれ ない。他に何かないですか? はい、君。 生徒 一人暮らしで寂しくありませんか。 木村 寂しいです。(苦笑い)次ないですか? はい、君。 生徒 テレビで一番好きな番組は何でしょう。 木村 テレビはあんまり見ないんだけどねぇ。何が好きかというとさ、日曜日 にたまに見るんだけど、この間、柔道の山下さんが自分の母校に来て授 業をした番組。後は『日曜こどもニュース』あれも結構分かり易くて面 白いよね。後はないですか? はい、どうぞ。 生徒 子供の時に親友はいましたか。 木村 親戚の子がすぐ隣の家に居て、一つ上で自分のお兄さんみたいな感じで 毎日遊んでいました。山行って遊んだり、キャッチボールしたり。 次は何かないですか? はい、君。 生徒 木村さんは子供の時、どんなテレビを見てたんですか。 木村 私の時はねぇ、いろいろあるよ。「わんぱくフリッパー」とか、(真正 面にいた先生がうなずきながら笑ってた)分かんないよねぇ。君たちね ぇ。「タイムトンネル」とか、「巨人の星」とか。 生徒たち わぉー!!(「巨人の星」と聞いてどよめく) 木村 新しい方の「巨人の星」じゃないよ。星飛馬が左投げの時の「巨人の星 」だからね。「ドカベン」もあったね。「ドカベン」は俺が高校の時だ よ。あとは「エイトマン」とか「鉄腕アトム」とか。「マグマ大使」と か。ここらへんはよく覚えてるんですよね。 生徒 「ハクション大魔王」 木村 ああ、「ハクション大魔王」あったね。「スーパージェッター」とかさ。 そんなところかな。あとは「タイガーマスク」とかね。 生徒たち あっ、「タイガーマスク」。 木村 はい、君どうぞ。 生徒 親友とキャッチボールをして誰が勝ちましたか。走った時とか、誰が勝 ちましたか。 木村 私はねぇ、自慢じゃないけど走るの遅かった。だから、いつもビリッケ ツだったけど、高校生になってサッカー部に入ってね、毎日走らされて ていつの間にか速くなってた。サッカーやってると準備体操がわりに、 学校の周りの砂利道を毎日走らされてて、あれは勝手に速くなるもんだ ね。後はねぇ、夏に合宿やるんだけど、柔道部の畳を借りて寝泊りする んだけどさ。朝、6時に起こされて瀬波海岸の砂浜をぐるっと走って来 て、4・5キロ走らされる。 生徒 何日泊まるんですか。 木村 合宿は1週間ぐらいかな。料理を作ってくれるのも、マネージャーの女 の子たちだしさ。食事するのも学校でやるよ。朝、そういうふうに走る でしょ。飯食ってその後で練習が始まる。パスとかシュートの練習が始 まる。合宿になると1日中練習させられてたよね。まっ、そんなところ ですけど。 先生 はい、それではもう時間になったので、終わりにしたいと思います。 木村 どうもありがとうございました。 先生 はい、気をつけ。 生徒たち 今日はどうも、ありがとうございました。 木村 はい、ありがとうございました。皆さんも元気でね。 生徒たち はい。 先生 木村さんもお元気で。 視聴覚教室を出ると車椅子に乗った女の子がニコニコと笑いながら私を見て いた。近づいて手を握り「元気でね」と言って小学校を後にした。 [ 完 ]