苗場の柏木義之くんが技術選にデビューした年、所属するスキー学校から新潟県代表で出場する選手と、新津出身で千葉県代表で出場する選手の応援に岩岳スキー場へ出かけた。予選の開催される日に日帰りでの応援であった。
カービングスキーという形状スキーが登場してまだ日が浅い時期である。
「総合滑降」と「急斜面整地小回り」の2種目が行われている日で、「9:1」の割合で総合滑降のゴールエリアにいる時間が多かった。
それだけ見ると、否応なしに気づくことが出てくる。
切り替えのシーンで、
低い、低すぎるポジションで切り替えシーンを対応する選手が多いこと、
だから、パラレルターンなのに急激にスキーを側方へ動かす切り替えになっていまうので、「フォールラインに絡みながら迎えるターンポジション」が「ターンの入り口で出来上がってしまいフォールラインに絡むまで何もできないポジション」の選手が多かった。
だから、スキーのラディウスどおりの回転弧しか描くことができず、下から見ていると、広い斜面が設定されているのに、中回りの回転弧しか描けない選手が圧倒的に多かった。
つまり、滑り手は角付けの切り替えだけ行い、それ以上何もしないのだ。回転弧はスキーが描くのであるが、滑り手のコントロール、回転弧を調整する意思は見受けられない。
急激に動く動作を下から見ていると、速く動かしていることがよくわかる。それに対し、ゆっくり(少しづつ)動かす動作を下から見ていると、動かしていることがよくわからない。
急激に動かすと雪面抵抗が増え減速につながる。極力減速させないためには雪面抵抗が増えないように動かしてやることが必要になってくる。そうすると、ゆっくり動いているように見えるようだ。
これは80年代前半に見たデモの方々の滑りにも見られていた。昔から変わらないのである。
見た目にだまされてはいけない。
本当に速く滑走し、理にかなった運動をしている選手の滑りは、雪煙りが上がらず、雪面に張り付いているような印象さえ受けてしまう。
岩岳の話に戻ると、総合滑降でターンをコントロールできていたのは、上位の20人くらいであったと思う。
その中でターンの前半が一番大きく描けていたのが柏木義之選手であった。ハート型の回転弧を描いていた。
そんなことを思いながら月末から始まるワールドカップレースの滑りを見ていきたい。