アルペンスキーでは、斜面に垂直な方向を感じながら、斜面の下へ降りていくことを第一に考え、細かいところを気にするのは後回しにした方が良いかも知しない。
そして、パワーポジションを意識できていると、様々なシチュエーションで前後・上下・左右に動くことを容易にしてくれる。
しかし、パワーポジションがうまくとれないケースがある。
上半身の前傾が解けてしまうことが多々起きてしまう。
特にターンの切替時に多く起きることと思う。
この原因としては、
(1)コア部及びハムストリングス等の筋力が弱く、上体が起こされてしまうこと(体に原因)、
(2)重力方向を意識しすぎることで、斜面に垂直に位置するタイミングが遅れてしまうこと(心と技に原因)、
(3)斜面に垂直に立つと、どの方向を向いていている時でも、上半身特に頭の位置が、足場やスキーよりも谷側に位置することになる。体を谷側に位置させることに恐怖感を抱いてしまい、躊躇してしまうこと(心に原因)、
などが考えられる。
(3)のケースは、初心者に多く見られるが、上級者と思っている方にも見られるのではないだろうか。
そこで、「心の問題だから、心を鍛えろ」では、根性論にしかならない。
私からの処方箋としては、「小学生が使うくらいの大きさの水筒」に水を入れて(同等の重さを)首から提げ、中急斜面を小回りでゆっくりと滑るというレシピ。ワンピでは水筒がぶらぶらして危ないので、ウエアの上着を着よう。
昔はカメラなどがこの役割であったが、今ではコンパクトになりすぎて錘の役目をしてくれない。
小回りで行うのは、小回りを上手にしたいためでなく、1本の滑りの中で切替の回数を多く練習できるから。
小回りのリズムを借りて、切替時のバランスをトレーニングしたいのだ。
首から提げているわずかな錘の重さを感じながら、ターン運動中の自分の感覚を見つめてみよう。
今まで以上に積極的に動ける環境が成立し、斜面に垂直な位置に立つ感覚がつかめてくるだろう。
このように、どんな方法をとっても良いので、成功体験をしてほしいということを望んでいます。
良い体験を良いと感じ、それを繰り返すことが「上達した」という地点に到達する唯一の方法だと思います。
「だめだ・・・もっとこう・・・」などのアドバイスは、必要な時に必要な量だけ与えた方が良く、欠点を指摘して改善する前に、
「良い体験を積む」「良い体験の出現回数を多くする」作業をして、「うまくできた」という達成感をスキーヤーに感じてもらいたいと思う。
スキーヤーにあっては、良い時のことも、悪い時のことも、素直に感じてほしい。
全ては「感じる」ことから始まり、その「差」、「違い」がわかってくるだろう。
指導者にあっては、スキーヤーのこの体験時間を大切に見守ろう。
(スキーを指導されている方へ)
そろそろ「欠点矯正法」を中心とした指導展開はやめませんか?
これが、スキーをしない人・しなくなった人が増えた一因に思えてならないのです。