指導の心得として、「初心者にプルークボーゲンをさせてはいけません。」ということを理解しましょう。
なめらかな回転弧を描くためには、運動の習熟(体験量)が必要となります。初めて行う運動に「習熟度」を求めてはいけないのです。なめらかに滑ることを強要するのではなく、自らがなめらかに滑ろうとするトライを温かく見守りましょう!
階段登行で、斜面に立つことを覚えたら、【階段下行】を、たくさん体験してもらいましょう!
階段下行は、パラレルターンに必要な「ポジション」を習得するにも最適です。
「片足が短く、片足が長い」スタンスで、谷側の何も無いところに足場を作り、そこに体重を預けて左右の足にしっかりと荷重がかかります。
片プルークのスタンスに共通するバランスを習得することができます。ターンをしないうちからターンの感覚を身に付けられるのです。
こちらは、「斜面に慣れている人が行う階段下行」の例です。
慣れているので、谷側の足をさらに谷側へ踏み出す量にあわせて、重心移動も同量行うことができます。(2つの動作が同調できています。)
谷側のスキーで体を支えることに習熟しているので、何もない未知の領域に、無造作に足を出すことができるのです。
初めて行う方は、そこが怖いところ!
「未知なこと」 に 「恐怖」を感じるのです。
別の角度から考察すると、常に両脚の間に重心がくるので、いつまでたってもプルークボーゲンから脱却できないかも、しれません。
しかし、これも習熟すると、シュテムターンへ発展させるカリキュラムを利用することが可能となります。
【階段下行の練習内容】
(写真をクリックすると拡大します。)
アルペンスキーは、坂を下だり降りるスポーツですから、練習内容は、坂を下ることを、たくさん体験していただくことに尽きる、と思うのです。
左の写真は今日はじめてスキーをされた方で、初歩動作を小一時間体験していただてから、初めて斜面にデビューして10分後に、「中斜面を階段下行する姿」を撮影したものです。
「広いスタンスでパラレルターンをしているポジションですよ。」と説明しておきますと、初歩滑走の経験の中に「フォールラインを向いたところから、降りながら向きを変えていくところ(山回りの部分)で、先ほどの階段下降の時のポジションを当てはめてみましょう。」と少し難しい課題にトライしても、具体的に運動をイメージする(直線的な移動方向から、回転しながら移動する)ことができますので、2つの脚にしっかりと荷重した安定したターンが生まれ、片プルークのポジションがパラレルターンへ導いてくれます。
指導者は環境を整えてあげ、未来を見据えた体験と言葉を提供していくことで、受講生は短時間で上達していきます。個人差もありますので、焦らず、ゆっくりと見守りましょう!
まるで、ゆるい角付けの内足と、強い角付けの外足のように見えますね。
ターン中に使える片プルークのポジションと、ターン外足への荷重感を体得するには、階段下行が最適だと思います。
初めて斜面に出て、左右の足の高低差を感じながら、両脚で体を支えることを覚えることはもちろん、同時に、プルークターンからパラレルターンへと変化できる基礎も、最初の1時間で体験できるのです。
短い脚と長い脚を上手に使い、斜面でバランスを取ることを最初に習熟しながら、転ばずにリフト乗り場への移動することが、初歩滑走の目的となるでしょう。
滑り方の良し悪しでなく、トライ&エラーを繰り返しながらも、リフト乗り場に到着できたことを褒めてあげましょう!
滑走エリアが広がり、滑走本数が一段と増えていきます。
すると、学習者自らが動作を習熟していきます。ターン外側のスキーで体を支えることに習熟してきます。
そこで、内脚股関節の内転を少しだけ加えることを学んでいただき、短期間でパラレルターンへと導いてあげましょう。