シュテムターンを不要とする声が上っていますが・・・。現場にいる私は、パラレルターンに必要なポジショニングを体感していだくために、特に2010年シーズンは、シュテムターンを多用しています。
パラレルターンに必要なパーツ練習と思って取り組み、そこから洗練化を経過して、パラレルターンの質を向上させていきたいのです。
【追記:2016.5.10】
股関節の可動範囲として、脚伸展位での外転は45度、内転は15度と言われています。
ですから、内脚の内転だけでは、外脚の傾きに同調できないのです。
私は一所懸命に内転の練習をしましたら、筋肉を傷めてしまいました・・・。
そして、2016年2月に開催されたWC苗場大会を2日間コース脇で観察した選手の動作を整理してみると、
外脚の外転と内脚の屈曲+外旋を、瞬時に行い、角付けを切り替えていました。GSも、SLも。
1)外足を押しずらすということ
【練習内容】
小さなハの字で立ち、そこから両スキーを押し開き、少し大きなハの字にしてみます。(股関節の外転運動)
そう、初心者がブレーキをかける動作と同じです。
この時に感じていただきたいのが、重心の位置。
小さなハの字で立っていた時よりも、少し大きなハの字にしてみると、重心の位置が雪面方向に下がっています。
今日初めてスキーをする初心者へ説明する内容と同じです。
「体をそのままにしてスキーを動かそうとしても、スキーは雪面に引っかかり、動きません。しゃがみながら両足を外側に動かすとスキーは動いてくれて、足元に”グググッ”と抵抗を感じることができます。この抵抗感を使ってブレーキをかけます。」
つまり、股関節の外転運動と、重心位置の下降が、うまくコーディネートされなくてはならないのです。
シュテムターンと言われる滑り方のうち、山開きシュテムターンの始動期のシーンで、ターン外側のスキーを押しずらす動作に、この動きを当てはめてみます。
少し高目のポジションで、山側の足をコンパクト(必要以上に開きすぎないよう)にハの字に開きます。
そこから、山側の(ターン外側の)スキーが押しずれるように、重心を下げながら、股関節を外転させます。
外転させればよいというものでもありません。外転は途中でやめて重みがスキーに伝わるように。
山側の(ターン外側の)足を曲げにいってはいけません。曲げにいっては腰が足の上に移動して角付けがゆるみます。
少し高目のポジションで出来た長さを変えないように、足のツッパリ感をもって、山側の(ターン外側の)スキーをずらします。
山側の(ターン外側の)足は、長いまま、ターンの最中は、雪面抵抗に対してアイソメトリック(等尺性収縮)を使います。
そして、そのまま、ターン外側のスキーがずれ続けるように、斜面の下へ落下していきます。
このアクションで、スキーに体の重みがしっかりと乗り続けることになります。
これにより、スキーのたわみを感じることができます。
スキーがたわむということは、真ん中あたりが押しずれて、トップとテールがひっかかている状態ではないでしょうか。
上手なスキーヤーに練習後の感想を聞いてみますと、「シュテムターンの始動期に重心を下げるという意識はなかった!」という方が圧倒的に多いです。
2)内足を押しずらすということ
【練習内容】
上記の1)の練習をしっかり行うと、ターン外側のスキーが押しずれるのに対し、内足(ブーツの位置)は内股関節の真下で体を支えるだけの役割しかしていないのに気付いてくる。(片プルークのポジション)
パラレルターンにしたいので、その内脚を股関節から内転させ、ターンの外側に配置させたいところである。
しかし、最大15度までしか内転できないので、内転だけでは、両脚の傾きは同調できません。
そこで、屈曲した内脚を外旋させます。すると、屈曲した脚の脛は、振子のようにスイングし、外脚の傾きに同調することができます。
さて、別の視点からこのシーンを見てみますと、
重心位置をそのままに、内足を内転+外旋させると、雪面から浮いた状態になるのである。
雪面から浮かないようにするには、内足(内ブーツ)を回転外側に位置させながら、「重心位置を下げること」をコーディネートするのだ。
このように、第1段階としてターン外スキーを押しずらすために重心位置を下降させる。第2段階としてターン内スキーを外側に押しずらすために、さらに重心位置を下降させる。
つまり、重心位置を下降させる2段活用というイメージである。
【外脚股関節の外転】
下記の写真をご覧ください。
まずは、外転を見てみましょう。
(1)両スキーを平行にして立ちます。
(2)ターンの外足をイメージした脚全体を外側に外転させます。股関節の真下に位置していた足が、外側に移動します。重心の高さをそのままにして行うと、足は浮きます。
(3)外転した脚をそのまま保持し、足が雪面に触れるようにするためには、重心の位置を下げて行きます。
つまり、スキーヤーが外転する位置に足を置きたいならば、重心位置を下げる動きとの連動性が必要となります。
次に、【内脚股関節の内転 + 外旋】を見てみましょう。
(3)外脚が外転して雪上に足が着地している時、内股関節の真下に内足が位置しています。
(4)重心位置を変えないで、内足をイメージした脚全体を内転させてみると、先ほどと同様に、足は浮きます。
さらに、内脚の股関節を外旋させますと、脛は振子のように外脚の傾きと同調します。
(5)内脚をそのままま保持し、足が雪面に触れるようにするためには、重心の位置を下げて行きます。
つまり、外脚を外転させるために重心位置を下げた位置から、内脚を内転+外旋させるために、さらに重心位置を下げることが必要となります。
おわかりのように、【外脚股関節の外転】 【内脚股関節の内転+外旋】の運動要領を習熟するためには、シュテムターンが最適です。
外脚と内脚を順番に動かしますから、どの筋肉が動きやすくて(よく伸びる)、どの筋肉が動きにくい(伸びない)か、を感じることができます。
ターンポジションの精度を上げるために、シュテムターンを利用して、パラレルターンに必要なポジションの感覚をつかみ取るのです。
(パラレルターンをするための内脚の動作には、さらにターン後半時に「内脚の外転」を使います。こちらは後日詳細を記載します。)
パラレルターンをするためには、スキーを傾ける量をコントロールすることが必要です。(傾けることと、緩めること)
また、同時に、スキーのセンター付近に重さを集中させることも必要です。
ターン全体を俯瞰すると、【「上体、体幹の安定」と「スキー角付けの調整」を両立させたい】訳です。
それには、【外転-内転】と、【元に戻る立位】をうまく使っていくとで、すばやい動きと、角付け&荷重を両立することができます。
シュテムターンを使って、パラレルターンを見直してみると、スムースなターンができない原因に気づくことができるでしょう。
プルークボーゲンやシュテムターンは、ターンができない人が行う種目ではなく、ターン外脚の外転位置を覚えるために練習するのです。
その位置がパラレルターンには必要なのです。
日常生活ではあまり使わない股関節の動きをしましたら、股関節まわりの筋肉が活性化されます。スポーツのスキーをしたいなら、筋肉の可動域についても見直してみましょう。
最終的には股関節の6つの動き(屈曲、伸展、外旋、内旋、外転、内転)を駆使していくと、脚の動きは3Dの動きになりますから、動きのイメージ作りも平面エリアから、立体エリアで考えるようにしましょう。
特に、外転位置にある足が元の立位へ戻る時には、足は斜面の下側へ落ちた位置に移動していくことをイメージしましょう。
これらは、トップページで紹介している1930年のハンネス シュナイダーの言葉に酷似していくのですよ。
現場は斜面であり、右ターンの次に左ターンをするアルペンスキーは、このあたりは変わりようがないのです。
(2013.12.31)
(2016.5.10)
3)シュテム動作(運動)のタイミングについて
初心者であれば、図の(1)の位置でこの2つの動きをしてみます。もちろん、1つづつ順番に。
上級者であれば、図の(2)の位置でこの2つの動きをしてみます。
スキーのズレを止めて体を傾けたり、内足に乗ってターンをする感覚(良くない事例)とは、はるかに違う安定感とスキーのたわみを感じることでしょう。
4)パラレルターンでも同様に
両足の位置と体の関係が体感できたら、腰幅程度に開脚したパラレルターンで、低速度で同様に滑ってみます。
外スキーのずらしと、内スキーのずらしを、順番に行うことから始めましょう。
パラレルターンになると、もう一つ意識しなければならない感覚があります。
ターンの外足が入れ替わる(斜面に直角に位置する)直前の谷側の足を、自分の体の方向へ引き寄せ、短くするという運動です。
平地で腿上げをするような感覚です。(ここで腸腰筋が活躍します。)
長くなっていた足を縮めて、左右同じ長さになって、斜面に直角な位置へ体を運びます。
スキーを支点に体が動くというイメージでは、スキーへの重みがはずれてしまう瞬間がでてくる。
スキーへの重みがはずれてしまうと、落下することを拒否する力が働いてしまう。
ターンの切替時に、体幹部のどこかを支点にして、足元が動くことと、体幹部が動くことをイメージできると、クロスオーバーとクロスアンダーが両立してくる。
よりスムースなパラレルターンになってくる。