ターンポジションの原点 プルークの直滑降から進行方向を変える


6 プルークの直滑降から進行方向を変える(一番最初に覚えたいこと)

初心者にとっても、ベテランスキーヤーにとっても、速く滑りたいレーサーにとっても、スキーがフォールラインに向いて、左右の足に高低差がなくなったシーンから、ターンの外足が斜面の下側に落ちていく時に、スキーヤーはどう対応するか、を見つめてみると良いと思います。

(1)フォールラインを向いた位置から回転する様子を上空から見てみる

山回りでの対応(1)

【A】は、スキーをハの字にキープしながら、斜面の最大傾斜線(フォールライン:平らな坂でボールを放ったら転がっていく方向)に向いた時の模式図(上空から見た図)です。
両足は腰・身体の横にある感覚、両足の 真ん中に腰・身体がある感覚です。そこから身体をどう動かすか?、ということが課題となります。

【斜面への落下と身体運動を合わせる】
ターンの外側の足(斜面を落ちていくと谷側に位置する足)、これを股関節から円錐方向に動かすことを意識します。
この動きは、準備体操の時に、片足で支持した状態で、宙に浮いている脚側の股関節を伸展させ、足を身体の少し後ろ側に位置させ、スタート位置とします。 そこから脚が円錐を描くように、脚を外側に回し身体の横に来ることを意識していただき、そこからさらに円錐運動を続けると、身体の前に足が来ることを感じていただきます。
このように事前に体験していただいていると、この局面で再確認すると、股関節を動かすイメージが斜面の中で意識できます。

次に説明することは、【B】です。
運動会で一列横隊に並んだチームが、グランドを一周するとしたら、回転する外側にいる人は内側の人より沢山進まないと、一列がキープできず、ギクシャクしてしまうことになります。
これを説明し、具体的な身体運動を説明する時に、「ターンの外側の足(ブーツ)を前に出していくんですよ」という、「曖昧な説明」をしてはいけません。
「自分のブーツの長さ(あるいは足の長さ)は何センチですか?その半分の長さだけ前に位置するように、少しづつ前に出してみましょう」と、具体的にどれだけの量を前に出していくか、のイメージを持ってもらってから、動いていただくのです。しかも、「エイ!ヤッ!」と瞬時に動かすのではなく、時間をかけてゆっくりと動く、時間的なイメージも重要です。

この結果、積極的に谷側の足(ブーツ)が自分より前に位置することを感じるとともに、現場は斜面なので、重力方向に対して身体を支える場所に、外足(ブーツ)は運ばれるのです。
すなわち、不安定になる時間をわずかにし、回転しながらすぐに身体が安定できる足場が出現するのです。
また、不安定になる時間帯が少ないので、転ばなくなります。

この足(ブーツ)の位置は、結果的に、次のターンへ行くための切り替えを間髪入れずに開始できることになります。
また、この位置に足(ブーツ)があれば、すぐに「横滑り」を開始することができます。
2015年現在、SAJ教育本部の指導者資格者検定にある横滑り種目は、横滑りと横滑りをターンでつなぎながら降りてくるのですが、ターンから横滑りへスムースに移行できない方は、股関節の球運動と足(ブーツ)を落としていく動きを、イメージできていないのでしょうね。

(2)フォールラインを向いた位置から回転する様子を進行方向から見てみる(脚の長さに着目)

上記(1)を経験し、転ばずに移動することができるようになってきたら、もう一つの課題(意識)を、先ほどの動きに加えていきます。

スキーヤーを進行方向の正面から見た図:脚の長さに着目

 

【A】は、スキーをハの字にキープしながら、斜面の最大傾斜線(フォールライン:平らな坂でボールを放ったら転がっていく方向)に向いた時の模式図(正面から見た図)です。
両脚を同じ長さにキープすると、腰(重心)は両足の中央に位置し、両足でブレーキが良く効き、次に来るシーン(ターン外足が谷側へ落ちていく)準備が整う。

【B】は、ターン外側の足を谷側へ落としながら少し前に位置させる動きに合わせて、山側となるターン内側に脚を少したたむように動かす課題を加えます。
このシチュエーションで初めて体験するのであれば難しい課題となりますが、先ほど「階段下行」で成功体験がありますから、2つの動きをコーディネートすることは難しくないはずです。

このシーンの課題をすぐにできるようになるために、最初に「階段下行」にトライするのです。
本当に必要な基本的な体験をしておくと、自発的に「運動の調整」を行うことが容易となります。

山側の脚をたたむタイミングがうまくとれないと、【C】の状態になります。
与えた課題ができないからと、指導者が「そうではなくて、こうしましょう」と、体験したことを否定してはいけません。
この【C】状況での「谷足と重心の位置」は、基底面積が狭い難しい状況です。そのような状況でバランスが取れたのですから、褒めなければなりません。
また、【C】のバランスは、シュテムターンのカリキュラム、横滑り、パラレルターンと共通するものです。初心者にとっては難しい課題です。「慣れてきたら次の課題として取り組むことになりますよ。」と予告すると、肯定的な経験として記憶されるでしょう。

この練習に慣れてくると、指導者の直後に学習者を位置させ、良い見本を提示しながら真似てもらうことで、運動要領に習熟していきます。時には前後を入れ替え、後ろから観察しながら、声掛けをすることで、学習者が自発的な運動を行う感覚が育まれます。
所々で休憩を入れながら、リフト乗り場まで転ばないで滑りきることを指導者の目標にして、下に着いたら、「あそこからここまで、転ばずに降りてこれましたよ。」と褒めてあげましょう。

私の場合、2時間の講習会で、平地や斜面での初歩動作、リフト乗って約60分、斜面での階段下行で10分、残りの50分でリフト乗り場に到着することを指導目標としています。そして残り20分を残して到着したならば、迷わずに2本めの滑走へリフト乗車します!

(2015.9.21)



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