3_4.脊椎伸ばしの按摩気を試す
 平成5年11月21日、新薬(臨床実験)が出来たので、今までの薬は全部やめ、薬合わせのため再々入院、しかし薬の調整が上手くいかず、8ヶ月ご厄介になりました。何とか歩けるようにはなりましたが、これ以上良くはならないとのことで、一先ず退院する事になりました。

 車から抱きかかえ「ただ今、またご厄介をお掛けします」と家へ入ったとたん、おばーさんに「こんなに長くいて歩けないのかよ。何のために入院してたんだ。かえって悪くなったではないか」と言われ、妻は返す言葉もなく俯いていました。その日は何とか動いていましたが、翌日になると全く動けず、朝食は何とか自力で食べましたが昼食・夕食になると手の震えが酷く、箸を持っても、ご飯が掴めず口に運ぶ事が出来ず、途中で食べるのをやめてしまいました。しょうがないので、おむすびの小さいのを作り、食べさせようと思いましたが、持つには持つのですが、手の震えが酷く、口に入りませんので、口の中に押し込んで食べさせました。体調は寝起きが一番悪く、首の硬直もないものの、足の硬直は前より強く、両足が棒のように固くなり、朝のストレッチ体操は欠かせなくなりました。また午後になって全身の(主に脊椎)指圧及びストレッチ体操を施しました。

 また座椅子に座らせると、体重が掛かった方に倒れ、自力で立て直す事が出来ず、口からよだれを垂らしウーウー唸っている日々が続きました。私は自治会・飲食組合・柔道の指導と家を空ける時が多いので、出かける時は座椅子に縛り付けて出かけました。これでは本人も可哀想だし、自分自身も参ってしまいそうなので、何か良い方法がないかと悩みました。

 ふと新聞の広告チラシに目が止まりました。脊椎伸ばしの按摩機でした。"ああこれだ。これを使えば自分も楽になるし、妻の脊椎を矯正するにはもってこいだ"と思い、その日の午後に購入し、どんな物かな?と思い使ってみたら、気持ちが良く、うとうとと寝てしまいました。少し痛いので、夏掛けを敷いて妻にやらせて見たら、何とか良さそうな気がしました。それからは、日に2回抱きかかえ按摩機に乗せ、マッサージをさせ暫く様子を見ながら、脊椎の矯正を試みました。

 床について、少し世間話をしているうち、数年前の事を思い出しました。姪の結婚式の時に「白と黒(私には苦労と聞こえた)のセットで買ったのがあるのだけど」「苦労(黒)をセットで買った?苦労をセットで買うからクローをシロと言うんだな」「そうじゃないの。クローでなくてクロなの。またからかって喜んでいるんだから」と笑いながら、やりとりし、言葉の揚げ足を取ったり体をくすぐったりして妻をからかったものでした。

 一月(ひとつき)ぐらいは私が按摩機に乗せていましたが、そのうち、自力で按摩機に掛けるようになり、あれほど強かった手の震えが治まり、3度の食事も自分で取るようになり、少しずつ笑顔が出るようになりました。それからは竹の子の皮を剥ぐように、日増しに元気になって行きました。