平成8年夏、長男は近くのマンションで子供も出来、楽しく暮らしております。「お父さん。お母さんが大分調子が良さそうだから、旅行に行かない?」「そうよな。暫く行かないから行って見るか」と急に話がまとまり、一泊二日の旅行をしました。久し振りの家族旅行です。妻は何の気がねもないせいか、そこぶる調子が良い。嫁と良く話をし、孫(小春)とも遊び、夕食の時もワインを一、二杯飲み、私たち男三人は、酒に興じて大いに楽しみました。
また11月の3日から5日の3日間、子供達が旅行に行く事になり、妻と二人で家にいても何もする事がないから、冗談で「十年も実家(妻)に帰ってないから行ってみるか」と言ったら、子供が「それはいいじゃん。それではね、俺達は帰りに東北道を通るから、実家で合流しようよ」と、またまた急に話が決まりました。
子供達は地元の若い衆とマイクロバスで、私達は電車で行く事になりました。車椅子で駅に着き、切符を出したら「ちょっとお待ち下さい」と言って、駅員さんを二人連れて来て、車椅子ごと持ち上げ、階段を下り、上りして、ホームまで連れて行ってくれました。「お客さん、東京駅に連絡してあり、駅に着いたらお迎えに来ますから、この位置から動かないで下さいね」と、発車するまで見守ってくれました。
東京駅に着いたら、車両の前に駅員さんが待っていて「ではご案内致します」と言って新幹線の待合室に連れて行かれ「少し時間がありますので、間近になったらお迎えに来ます」と行ってしまいました。30分ぐらい待ったら「古川に行かれるお客さん、そろそろ行きますよ」と迎えに来てくれました。
東京駅の地下道を通り、ホームまで案内してくれたが、地下道は初めて通りました。古風豊かなレンガ作りの素晴らしい所でした。昔、郵便局があり、電車も出入りしていたそうです。妻のお陰で、めったに見られない物を見て感激しました。
古川に着いたら、駅員さんが待っててくれて、エレベーターに乗り外まで案内してくれました。かゆい所に手の届くような行き届いた親切には驚きました。非常に有り難く感謝しております。
外に出たら兄貴が迎えに来ており、実家に直行した。「ただ今。お世話になります」「良く来たちゃ。上がってゆっくりしてくらっしゃい」。十年振りの帰郷で、おねえさんや、ばっちゃま達と、何時までも話が絶えなかったようでした。その日は、私達だけで泊めて頂き、翌日の夕方、子供二人と嫁と孫と合流しました。大勢になってしまったので、近くのセンターに宿を取ってあるからとの事で、そちらに出向きました。総勢13人、妻はお姫様扱いで、皆に大事にされ、面倒も見て貰い、兄弟の情愛の深さを身にしみて有り難さを感じた事でしょう。
数年振りの帰郷で夕食は盛り上がり、飲めや歌えやで、大盛況。時間のたつのも忘れ大いに楽しみました。
翌朝、面白い事が起こりました。妻は朝、体が硬直しているので何時ものようにストレッチ体操をしてやったが、体が柔らかくならず、薬も効いて来なかった。「お父さん、トイレに行きたい」と言うので、車椅子に乗せ用を済ませた。ところが、それまで全然歩けなかったものが、急に歩き出した。薬が効き始めると、手のひらを返すように、症状ががらっと変わってしまう、不思議な病気です。
「なんだよ。今になって調子が良くなったのかよ。昨日は余り動かなかったから、俺が車椅子に乗るから、運動のつもりで押して行け」と言うと、妻は笑いながら「ハイ、出発します」。部屋の近くに来たら、お姉さんが待っていて、驚いたような顔で「敬子ちゃんが、てるをちゃんを車椅子に乗せて歩いている。皆ちょっと来て」と皆を呼んで、私達の方を見て驚くやら、不思議に思うやら、後で話の種になり、大笑いしながら話に興じていました。
今回の里帰りは皆さんに大変お世話になりました。帰りも新幹線で帰って来ましたが、行く時と同様、駅員さんにはすっかりお世話になりました。
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